会社からお金を借りる方法|従業員貸付制度を利用する条件を徹底解説

お金を借りるには銀行や消費者金融を利用する以外に、従業員貸付制度(社内貸付制度)を活用するという方法もあります。

従業員貸付制度(社内貸付制度)なら、自分の勤めている会社から低金利でお金を借りられて便利です。

とはいえ会社に勤めている人なら誰でも借りられるわけではありませんので、制度の仕組みや利用条件を知っておく必要があります

従業員貸付制度(社内貸付制度)を利用できる人の条件は、以下のとおりです。

  • 正社員で働いている
  • 勤続年数が一定の年数ある
  • 連帯保証人が用意できる
  • 正当な理由がある
  • 会社からお金を借りるには、すべての条件を満たしていなければなりませんので注意が必要です。

    この記事では従業員貸付制度の申し込み条件について詳しく解説しています。

    制度の仕組みや融資までの流れについても紹介していますので、参考にしてください。

    そもそも会社からお金を借りられる従業員貸付制度(社員貸付制度)ってどんな制度?

    書類

    従業員貸付制度(社員貸付制度)とは、福利厚生の一種として社員が会社からお金を借りられる制度のことです。

    社員が消費者金融などから融資を受けて、金銭トラブルに巻き込まれてしまうのを未然に防ぐ目的があります。

    もうひとつの目的は、満足に昇給されない給料をカバーすることです。

    定期的に社員の給料を昇給できる会社は激減しており、収入が増えないことから生活苦に陥ってしまう人も増えています。

    定期昇給が激減した原因としては、日本企業の経営方針を決定する経団連(日本経済団体連合会)が、2020年以降の賃金に関して以下のような発言をしたことが挙げられます。

    経団連は2020年の春季労使交渉で会員企業に、年功型の賃金など横並びを特徴とする日本型雇用システムの再検討を呼びかける方針だ。

    つまり長年勤めていても、給料が上がらない可能性があるということです。

    給料が上がらないことによる生活苦をサポートするために、従業員貸付制度を取り入れる企業は年々増加しています。

    限度額や金利は会社によって異なりますが、社内制度であるため社員の人柄や状況を考慮して審査を進めてもらえるという点は共通しています。

    ただし、従業員貸付制度を導入しているのは社員と労使協定を結んだ企業のみとなっているため注意が必要です。

    社員と労使協定を結んでいる会社で利用できる

    書類

    社員の代表または労働組合との間に労使協定を結んだ会社だけが、従業員貸付制度を取り入れることができます

    労使協定とは?

    労働者と雇用主の間で書面によって結ばれる協定のこと。
    締結した内容に関しては、速やかに社員に周知しなければならない。

    従業員貸付制度は会社側が制度の内容を定めた規定を作成し、社員の代表または労働組合と協議して承認を得ることで初めて導入されます。

    規定によって定められているのは、以下の項目です。

    • 従業員貸付制度を取り入れる目的
    • どのような条件の人が対象なのか(貸付対象)
    • どのような理由なら借りられるのか(貸付事情の範囲)
    • 貸付限度額
    • 返済方法
    • 返済期限
    • 貸付金利

    労働組合がある企業は福利厚生に力を入れているため、導入されている確率が高いです。

    制度があるか不明確な場合は、人事部や総務部など福利厚生の担当部署に問い合わせてみましょう。

    また従業員貸付制度を導入していない場合でも、前借りという形であればお金を借りられます。

    制度がなくても給料の前借りはできる

    給与明細

    従業員貸付制度がなかったとしても、給料の前借りという形なら会社からお金を借りられます

    なぜなら、給料の前借りは労働基準法第25条によって許可されているからです。

    給料の前借りについては、厚生労働省のホームページでも以下のように記載されています。

    質問
    従業員が給料を前借りしたいと申し出てきました。前借りの前例がないので、どのようにすればいいか教えてください。

    回答
    労働基準法第25条には非常時(出産、結婚、病気、災害等)について、給料日前でも給料を払うように定めています。

    ただし前借りできるのは、労働した日数分の給料のみとなりますので注意が必要です。

    例えば毎月20日が給料日の人が5日に前借りを申し出た場合は、20日から5日までの15日間の給料が振り込まれることになります。

    お金に困った場合は、給料の前借りについて会社に相談してみましょう。

    借り入れの緊急性が高い場合は、給料よりも高額のお金を貸してもらえるケースがあります。

    利益を目的としていないため金利は2.0〜5.0%と低い

    紙幣と小銭

    従業員貸付制度は会社の福利厚生であり利益を上げることを目的としていないため、年2.0〜5.0%という超低金利でお金を借りられます

    とはいえ会社の利益を上げることが目的ではないなら、なぜ金利を設定しているのか気になる人もいるのではないでしょうか。

    従業員貸付制度に金利が設定されているのは、無利子で会社が社員にお金を貸すと法人から個人への贈与とみなされて所得税の対象になってしまうからです。

    法人から個人への贈与にかかる税金については、国税局のホームページでも以下のように記載されています。

    1 法人からの贈与により取得した財産
    贈与税は個人から財産を贈与により取得した場合にかかる税金であり、法人から財産を贈与により取得した場合には贈与税ではなく所得税がかかります。

    つまり会社から無利子で借りると社員の所得としてカウントされ、所得税を払わなければいけなくなるということです。

    社員が高い税金を払わずに済むように、最低限の金利が設定されています。

    限度額は100万円前後で会社の貸付規定ごとに異なる

    電卓

    会社ごとの貸付規定によって異なりますが、従業員貸付制度の限度額は100万円前後に設定されているケースが多いです。

    会社によっては勤続年数ごとに限度額が増えたり、月給2ヶ月分などといった金額が定められていたりする場合もあります。

    従業員貸付制度の限度額は誰でも上限まで借りられるわけではなく、借り入れの理由や勤続年数などをもとに社内審査で決定されます。

    必要な金額が明確に決まっている場合は見積書や計画書などを事前に提出して、審査担当者に資金使途が伝わるようにすると良いでしょう。

    従業員貸付制度(社員貸付制度)の申し込み条件|どんな人が借りられる?

    数字

    従業員貸付制度(社員貸付制度)でお金を借りるためには、いくつかの申し込み条件をクリアしておく必要があります

    従業員貸付制度の申し込み条件は、以下のとおりです。

    • 正社員である
    • 一定の勤続年数がある
    • 連帯保証人が用意できる
    • 正当な理由がある

    会社内の制度なので、社内の立場や職位なども密接に関わってくるのが特徴です。

    それぞれの項目の条件を満たしていれば、誰でも申し込めます

    申し込み条件についてひとつずつ解説していきますので、参考にしてください。

    正社員でなければ借りられないケースが多い

    給与明細

    従業員貸付制度は正社員を対象としているケースが多く、アルバイトやパートとして働いている人は申し込めない場合があります。

    正社員は毎月の給料が安定していますが、時給で働くアルバイトやパートの人は収入に波があって返済できなくなる可能性があるからです。

    会社としては貸したお金を踏み倒されると赤字の原因になってしまうため、貸付対象者を完済が見込める正社員に絞っています。

    ただし正社員であっても、勤続年数が短い場合は申し込んでも審査に通らない場合がありますので注意してください。

    勤続年数が長いほど信用度が高い|転職してすぐだと落ちる可能性大

    従業員貸付制度では勤続年数が長いほど会社からの信用度が上がり、お金を借りやすくなります。

    同じ会社に長く勤めている人は離職する可能性が低く、会社に貢献している人物だと判断されるからです。

    反対に勤続年数が短い人や転職を繰り返している人は離職する可能性が高いと判断され、審査に落ちやすくなります

    社員が返済途中で退職してしまうと会社は返済の請求がしにくくなるため、離職する可能性がある社員への貸付には消極的です。

    勤続年数は信用できる人物かどうかというひとつの判断基準となりますので、転職したばかりの人は1年以上働いてから申し込むと良いでしょう。

    多額の借り入れをする場合は連帯保証人を用意しておく

    書類

    自分の月給以上の金額を借りたい人は、連帯保証人を用意しておくことをおすすめします。

    連帯保証人とは?

    主債務者(申込者)が返済できなくなった時に、代わりに返済する義務を負う人のこと。保証人よりも強制力が強い。
    主債務者が「支払いたくない」と返済を拒否した場合は、代わりに支払わなければならない。

    連帯保証人が必要になる状況は会社の規定によって異なりますが、100万円以上の高額借り入れを検討している場合は必要だと覚えておきましょう。

    従業員貸付制度では、安定した収入があれば誰でも連帯保証人として認められます。

    会社からお金を借りる時には、以下のような人を連帯保証人にするケースが多いです。

    • 配偶者
    • 兄弟(姉妹)
    • 職場の同僚
    • 友人

    ただし連帯保証人を頼むと会社からお金を借りようとしていることが周囲の人にバレてしまうため、誰にも知られたくない人は保証人なしで借りられる貸金業者を利用しましょう。

    会社から借りられるのは緊急に必要な費用だけ

    紙幣

    従業員貸付制度を利用するには、何のためにお金を借りるのかという理由が重要なポイントです。

    ただし従業員貸付制度で借りられるのは、緊急で必要になった費用のみとなっていますので注意して下さい。

    緊急で必要になる費用としては、以下のような例が挙げられます。

    • 出産費用
    • 事故、病気の療養費
    • 葬儀に関わる費用
    • 災害時に必要となる費用
    • 自宅の修繕費
    • 盗難などによる一時的な生活資金
    • 本人の引越し費用

    いずれも急を要する内容で、会社に納得してもらえる理由であることが重要です。

    特に火事や盗難など緊急性の高い被害に遭った場合は、優先的に貸付をしてもらえますので審査担当者に相談するようにしましょう。

    遊興費は理由として認められない

    休憩

    旅行代や趣味にかかる費用などの遊興費は、理由として認められませんので注意してください。

    従業員貸付制度の借り入れ理由として認められない例は、以下のとおりです。

    従業員貸付制度の対象にならない費用

  • 旅行代
  • 自動車の購入費用
  • ギャンブル代
  • 服飾費
  • 結婚式にかかる費用
  • ただし結婚式にかかる費用は会社によっては認められる場合がありますので、担当者に確認してください。

    従業員貸付制度は、あくまでも生活に困った場合の救済措置だと考えておきましょう。

    社長が会社から借りる際も正当な理由が必要になる

    社長が会社からお金を借りる場合でも、正当な理由が必要になります。

    自分の会社だからといって正しい手続きを取らずに会社からお金を借りてしまうと、利益相反行為とみなされてしまいます

    利益相反行為とは?

    一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為のこと。
    社員の利益をはかるべき立場である社長が、自己の利益のために会社から無断でお金を借りることもこの行為に該当する。

    会社から社長への貸し付けは脱税の抜け穴になりやすいため、税務署の調査が入った場合に厳しくチェックされる項目です。

    特に返済時に利息の支払いを忘れてしまうと、決算期に利息の計上漏れを指摘されて追徴課税がおこなわれますので注意してください。

    社長も借り入れ時には社員と同じように理由を申告し、書面で契約を結びましょう。

    嘘をつくと詐欺罪にあたる可能性があるので注意

    借り入れ理由で嘘をついてお金を借りると、最悪の場合には詐欺罪に問われる可能性がありますので注意が必要です。

    第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

    従業員貸付制度は社員と会社との信頼関係で成り立っている制度であるため、虚偽の申告が発覚した場合には一括返済を迫られることもあり得ます

    悪い噂が流れて職場で働きづらくなる可能性もありますので、くれぐれも借り入れの理由で嘘をつかないようにしましょう。

    従業員貸付制度(社員貸付制度)の申し込み方法は?

    申込書

    従業員貸付制度(社員貸付制度)の申し込み方法は明らかにされていない部分が多く、どのように申請したら良いのかわからない人も多いのではないでしょうか。

    申し込み方法は企業によって多少異なりますが、大まかな流れは共通しています。

    従業員貸付制度の申し込みの流れについては、以下のとおりです。

    申し込みの流れ

    1. 上司に借り入れしたい旨を相談
    2. 担当者に借り入れしたい旨を告げ、申込書を受け取る
    3. 必要書類を提出
    4. 社内審査(2〜3週間)
    5. 審査結果通知
    6. 口座に振込入金

    まず上司に借り入れの相談をして許可を得てから、福利厚生の担当者に従業員貸付制度を利用したい旨を伝えます。

    担当者から従業員貸付制度の説明を受けた後に申込書を受け取り、必要書類と一緒に提出すると審査がおこなわれます。

    審査の内容については、以下で詳しく解説していきますので参考にしてください。

    審査は社内でおこなわれるので信用情報は照会されない

    従業員貸付制度の審査は、人事部や総務部などといった福利厚生の担当部署でおこなわれます

    外部委託はされませんので、信用情報の内容によって審査結果が左右されることはありません

    信用情報とは?

    これまで借りたローンの履歴がすべてわかる個人情報のこと。
    金融機関に申し込むと、必ずJICC(日本信用情報機構)CIC(株式会社シー・アイ・シー)などの指定信用情報機関に照会されてこれまでの借入状況のチェックを受ける。

    従業員貸付制度の審査では過去の借入状況や年齢などの属性ではなく、人柄や勤務態度を重視されます。

    社内審査の大まかな流れは、以下のとおりです。

    1. 申し込み条件に合致しているかを確認する
    2. 申し込みの理由が妥当であるか検討する
    3. 融資額を決定
    4. 社長による決済を受ける
    5. 本人に審査結果を通知

    従業員貸付制度の審査担当者は申込者から提出された書類を元に審査をおこない、上司が最終的な決定を下します。

    担当部署の審査を通過すると社長による最終確認がおこなわれ、決済が下りると本人に審査結果が通知されるという流れになっています。

    審査には2〜3週間かかる

    カレンダー

    従業員貸付制度の審査には、2〜3週間ほどかかるのが一般的です。

    人柄重視の審査になりますので、本人の働きぶりや性格について上司や同僚などにヒアリングする時間が必要になるからです。

    審査基準は厳しいわけではありませんが、時間がかかるということを覚えておきましょう。

    すぐにお金が必要な場合は、金融機関を利用するのもひとつの手段です。

    必要書類は4種類!特に借用書はトラブル回避のために欠かせない

    契約書

    従業員貸付制度で提出を求められる書類は、以下の4種類です。

  • 申込書
  • 契約書
  • 借用書(金銭消費貸借契約書)
  • 見積書(または領収書)
  • 会社によっては多少異なるケースもありますが、基本的にはこの4種類が必要になります。

    特に借用書は金銭トラブルを回避するために必須で、最も重要な書類です。

    万が一会社の言い分が変わって不当な取り立てをされても、借用書さえ書いていれば法的に対抗することができます。

    金銭消費貸借契約書として書式が用意されていることもありますが、中小企業などでは自分で作成して提出しなければならないケースも多いです。

    借用書は正しい書き方があり、ルールを守って書かなければ無効になってしまう可能性があります。

    返済方法は給与天引きなので延滞の恐れはない

    通帳とキャッシュカード

    従業者貸付制度での借入金の返済は給与天引きでおこなわれるため、うっかり延滞してしまうミスは起こりません。

    指定口座に振り込んだり現金手渡しで返済するのは手間がかかりますし、忘れて延滞してしまうと社内での信用を失ってしまいます。

    毎月の返済額が給与天引きされていれば、支払い忘れの心配もなく安心です。

    給与天引きによる返済ができるのは、労使協定で返済方法に給与天引きを指定している企業に限定されています。

    なぜなら労働基準法第17条によって、給与と貸付金の相殺が禁じられているからです。

    (前借金相殺の禁止)
    第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

    つまり会社側が勝手に社員の給料から天引きするのは法律違反であり、処罰の対象になるということです。

    会社からお金を借り入れる際は、労使協定によって給与天引きが認められているかどうかを担当者に確認するようにしましょう。

    転職や退職をする時には一括返済を求められる

    低金利で借りられるお得な従業員貸付制度ですが、完済前に転職や退職をする場合は一括返済を求められるため注意が必要です。

    一括返済の方法は退職金から差し引かれるのが一般的ですが、退職金が借金の残高より少ない場合は不足金額を一括で支払わなければなりません

    特に勤続3年未満で転職する人は退職金制度の対象外であることも多く、退職時にまとまったお金を用意しなければいけなくなります。

    返済を巡ってトラブルになると今後の生活に悪影響が出ますので、数年以内の転職を視野に入れている人は借り入れを少額にしておきましょう