従業員の給料が払えない時はどうすればいい?給与の未払いや遅延を回避する方法

日本企業の99.7%は中小企業が占めているといわれており、参議院の調査によると、中小企業は大企業に比べて資金繰りが厳しいという結果が出ています。

中小企業の経営者の中には、このままでは従業員の給料が払えなくなると悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

従業員の給料を払うことは経営者の義務であるため、遅延や未払いの状態が続くと労働基準法違反となって刑事罰を受ける可能性があります

従業員の給料を払えない場合は、以下の3つの対策法を実践すると資金調達が可能です。

  • 役員報酬を減額して給与の支払いに充てる
  • 取引先に期限の交渉をして支払いを待ってもらう
  • 必要額だけ金融会社から借り入れする

他にも有効な対策方法がありますので、あなたに最適な方法を見つけましょう。

この記事では、従業員の給料が払えない時の対策方法について解説していきます。

従業員の給料を減額したり闇金からお金を借りたりしなくても、問題を解決できますので参考にしてください。

従業員の給料を払わないとどうなる?未払いで逮捕されるって本当?

給与明細

従業員の給料を払わないと、最悪の場合には逮捕されてしまう可能性があります

なぜなら従業員の給与の支払いは、経営者の義務として労働基準法で定められているからです。

給与を支払う義務については、厚生労働省の公式ホームページにも記載されています。

労働基準法第24条においては、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならないとされています。

給与の未払いは刑事罰の対象となり、以下のように書類送検や逮捕に至るケースがあります

滋賀・彦根労働基準監督署は、賃金支払い日に賃金を支払わなかったとして、木造建築工事業のアルファホーム㈱(滋賀県彦根市)と同社代表取締役を最低賃金法第4条(最低賃金の効力)違反の疑いで大津地検彦根支部に書類送検した。代表取締役については、平成29年9月6日に通常逮捕もしている。

たかが数ヶ月のことだと高を括っていると、取り返しのつかないことになる可能性があります。

全ての会社は、いかなる状況でも労働基準法に則って運営しなければなりません

労働基準法を統括する厚生労働省は、東日本大震災で被災した企業からの質問に対して以下のように回答しています。

【Q5-1】 今回の地震で、1.事業場の倒壊、2.資金繰りの悪化、3.金融機関の機能停止等が生じた場合、労働基準法第24条の賃金の支払義務が減免されることはあるでしょうか。

[A5-1](前略)御質問については、労働基準法には、天災事変などの理由による賃金支払義務の減免に関する規定はありません。

つまり企業はどのような状況に陥ったとしても、必ず給料を支払わなければならないということです。

  • 資金繰りが悪化し、大赤字になってしまった
  • 災害によって事務所が倒壊した
  • 金融機関からの融資が受けられなかった
  • 上記のような事態になったとしても、支払い義務は減免されませんので注意してください。

    従業員の給料の支払い義務に関しては、労働基準法第24条で定められています。

    支払い義務は労基法で定められている!必ず守らなければならない5原則とは?

    給料を支払う義務に関しては、労働基準法第24条によって以下のように規定されています。

    賃金の支払方法は、労働基準法によって、賃金は、原則として*、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、同法24②において(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されています(賃金支払の5原則)。

    つまり賃金支払の5原則に従って毎月給料を支払わなければ、法律違反になってしまうということです。

    労働基準法第24条に違反すると、30万円以下の罰金もしくは3年以下の懲役が課せられてしまいます。

    賃金支払の5原則は、経営者が必ず押さえておかなければならない重要なポイントです。

    賃金支払の5原則

  • 通貨払の原則
  • 直接払の原則
  • 全額払の原則
  • 毎月払の原則
  • 一定期日払の原則
  • 各項目の内容について、詳しく解説していきます。

    通貨で支払う義務があるため現物支給は許されない

    紙幣

    現物を給料として支給することは認められておらず、必ず通貨で支払う義務があります(通貨払の原則)。

    現物支給は価値が不明瞭なうえ換金が不便であり、生活費として成立しなくなる恐れがあるからです。

    以下のような品物を給料代わりにすることは禁じられていますので、覚えておきましょう。

    給料として認められない例

  • 時計
  • 貴金属
  • 骨董品
  • 定期券
  • 在庫商品
  • 商品券
  • 労働者に直接支払う義務がある

    給料は第三者ではなく、労働者本人に対して支払うことが義務付けられています(直接払の原則)。

    中間に人が入って、不当に労働者の賃金を搾取するリスクを回避するためです。

    仮に本人自ら許可を出したとしても、第三者を給料の受取人にすることは禁じられており、契約自体が無効になります。

    そのため親に対して、子供の給料を勝手に支払うことはできませんので注意してください。

    必ず全額まとめて支払わなければならない

    給料は全額まとめて支払わなければならず、分割払いは法律違反になります(全額払の原則)。

    分割払いを許してしまうと、従業員の労働に見合った対価が払われない可能性があるからです。

    分割払いと同様に、無断で給与天引きをして全額支払わないことも禁じられています

    そのため会社の都合で給与天引きをする場合は、必ず従業員から承諾を得てください。

    ただし所得税や社会保険料など従業員が納める義務がある支払いに関しては、事務手続きの簡素化のために給与天引きが認められています。

    毎月1回以上支払わないと法律違反

    カレンダー

    会社は従業員に対して、最低でも毎月1回は給料を支払わなければいけません(毎月払の原則)。

    給料の間隔が開きすぎると、社員の生活スタイルが不安定になってしまうからです。

    月に1回の支払いが義務付けられているだけですので、月に2回など回数が多くなるのは問題ありません。

    給料日を明確に指定する必要がある

    必ず給料日の日付を指定し、遅滞なく支払う必要があります(一定期日払の原則)。

    支払日が定まっていないと社員は計画的に生活費を支払うことができなくなり、生活に支障が出てしまうからです。

    例えば毎月20〜30日の間というように、変動する期日を定めることはできませんので注意してください。

    ただし支払日が休日にあたる場合は、日付の変更が認められます。

    後回しもご法度!給料の支払いを遅延する3つのリスク

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    給料の未払いはもってのほかですが、支払いを遅延するのもおすすめできません

    なぜなら支払いを遅延すると、様々なリスクが付きまとうからです。

    給料の支払いを遅延することによって生じる3つのリスクは、以下のとおりです。

  • 従業員に不信感を抱かれて業務に支障が出る
  • 遅延損害金を支払う義務が生じる
  • 訴訟を起こされる可能性がある
  • 給料の遅延は未払い同様に法律違反となりますので、百害あって一利なしだといえます。

    従業員の給料は、以下のような必要経費の中でも最優先で支払わなければなりません

    必要経費の支払いにおける優先順位

    1.従業員の給与
    2.買掛金(仕入、外注)
    3.諸経費
    4.税金、社会保険料
    5.銀行返済

    給料の支払いを遅延することによるリスクについて、詳しく解説していきます。

    従業員から不信感を抱かれて業務に悪影響が出る

    一度でも支払い遅延をすると従業員から不信感を抱かれて、業務に悪影響が出てしまうケースがあります。

    なぜなら給料が払えないということは、経営が傾いているのではないかと疑われてしまうからです。

    従業員は給料によって生活を成り立たせているため、振り込まれないと公共料金の支払いや住宅ローンの支払いなどに悪影響が出ます。

    不信感から優秀な人材が退職してしまうと、会社全体の大きな損失にもなりかねません。

    社員がいなければ会社は成立しませんので、従業員の生活を第一に考えましょう。

    遅延損害金を支払う義務が生じる

    電卓と紙幣

    給料の支払いが遅れると、遅延損害金を支払う義務が生じます

    給料の支払い遅れに対する罰則として、商法によって定められているからです。

    遅延損害金については、厚生労働省が管轄する東京労働局のホームページにも以下のように記載されています。

    ○遅延損害金・遅延利息
    賃金などが支払われない場合には、本来支払われるべき日の翌日から、遅延している期間の利息に相当する遅延損害金(年利6%)がつくこととされています。(商法514条)

    つまり1日でも期日を過ぎると、本来の給料にプラスして遅延損害金を支払わなければならないということです。

    支払っていない期間が長くなればなるほど、遅延損害金は膨らんでいきます。

    大手配送会社のヤマトホールディングスは未払い残業代の支払いに、遅延損害金を含めて230億円もの莫大な費用を投じることになりました。

    宅配便最大手ヤマトホールディングス(HD)は、全社的な勤務実態調査で判明した残業代の未払い分を、18日に対象者に一斉に支給したことを明らかにした。(中略)未払い分は総額約230億円。

    遅延損害金が高額になると会社経営の存続自体が危ぶまれてしまいますので、給料の支払いに遅れてしまった場合は1日でも早く支払うことが重要です。

    訴訟を起こされる可能性がある

    給料の支払いが大幅に遅れると、従業員から訴訟を起こされてしまう可能性があるため注意が必要です。

    給料の支払いは法律で定められていますので、会社側が勝訴する可能性は極めて低いといえます。

    判決が出るまでの1〜4年の間に裁判所へ何度も出廷しなければならず、時間的なコストもかかってしまいます。

    敗訴した場合は、遅延損害金を含めて未払い賃金を支払わなければなりません

    裁判沙汰になると新聞やニュースなどで取り上げられるため、企業イメージが悪くなって今後の経営に支障が出てしまいます

    従業員の給料が払えない場合に社長がとるべき行動とは?対策法を紹介

    チェックリスト

    従業員の給料が払えない場合に社長がとるべき行動は、大きく分けて5つあります。

    従業員の給料が払えない場合の対策法は、以下のとおりです。

  • 役員報酬を減額して給与の支払いに充てる
  • 必要額だけ金融会社から借り入れする
  • 取引先に期限の交渉をして支払いを待ってもらう
  • 社員に状況を説明して理解を求める
  • 倒産危機にある場合は国の未払賃金立替制度を利用する
  • 給料が支払えない状況になった場合は経営者が様々な方法を駆使して資金繰りをするか、社員に納得してもらったうえで支払いを待ってもらわなければなりません。

    それぞれの対策法について解説していきますので、参考にしてください。

    役員報酬を減額して給与の支払いに充てる

    従業員の給料が支払えないときに真っ先に見直すべきなのは、役員報酬です。

    取締役や監査役といった役員への報酬を減額し、従業員の給料に充てましょう。

    事業年度の途中に減額することは原則できませんが、経営状況が悪化するなど止むを得ない事情がある場合は特別に認められています

    国税庁のホームページでは業績等の悪化により役員給与の額を減額した企業からの質問について、以下のように回答しています。

    経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じたために行ったものであり、業績悪化改定事由に該当するものと考えられます。

    ただし役員報酬の減額は取締役会で決議を取り、役員全員からの賛同を得る必要がありますので注意してください。

    必要額を金融機関や貸金業者から借り入れする

    給料の遅延や未払いを回避するためには、金融機関や貸金業者から融資を受けるのもひとつの手段です。

    従業員に支払う給料は事業資金として認められており、ビジネスローンから借り入れできます。

    事業資金に特化したビジネスローンは、会社経営者への融資に積極的です。

    取引先に支払いが滞りそうな時の一時的な補填目的としても利用できますので、事業資金に困ったら活用しましょう。

    ビジネスローンについては以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

    取引先に期限の交渉をして支払いを待ってもらう

    請求書

    取引先に期限の交渉をして、買掛金の支払いを待ってもらうという方法も視野に入れておきましょう

    交渉次第では、支払いを待ってもらえる可能性があります。

    交渉の際に最も重要なのは、どのような事情で支払いが遅れてしまうのかを正直に話すことです。

    私情に訴えかけるのではなく、客観的な事実を述べたうえで期日がいつになるのかということを誠実に話しましょう。

    一方的なメールやFAXなどで済ませてしまうのはトラブルの原因になりますので、訪問して直接交渉するようにしてください。

    ただし支払いが遅れると信頼関係が悪化して契約を打ち切られたり、債務不履行として訴訟を起こされたりする恐れもあります

    契約が打ち切られると会社経営に悪影響が出ますので、あくまで最終手段として利用してください。

    どうしても支払えなくなったら従業員に状況を説明して理解を求めよう

    時計

    どうしても給料が用意できなくなってしまったら、従業員に状況を説明して理解を求めましょう

    給料の支払い遅延は生活に関わる事柄であり、従業員の理解を得ることが欠かせないからです。

    従業員に事情を説明する際には、以下の3つのポイントが重要になります。

  • なぜ払えないのかを正直に説明する
  • いつ払えるのかを期日を明確にする
  • 謝罪の意思を必ず伝える
  • 説明もなく勝手に給料の支払いを遅延することは許されないため、必ず理由を説明しなければいけません。

    説明の際には支払いが遅れてしまうことに対する謝罪と、何日に支払うという期日を明確に伝える必要があります。

    支払いが遅れた場合は、年利6%の遅延損害金を支払わなければいけません

    例えば月給20万円の人の支払いが10日遅れた場合の遅延損害金の計算式は、以下のとおりです。

    20万円×6%÷365×10日=320円

    月給20万円にプラスして、遅延損害金の320円も支払わなければなりませんので注意してください。

    従業員に支払いを待ってもらっても、どうしても支払いができずに倒産の道を選ばざるを得ない場合は、未払賃金立替制度という国の制度を利用することができます。

    倒産危機にあるなら国の未払賃金立替払制度を利用する

    経営不振により止むを得ず倒産する場合は、未払賃金立替払制度という国の制度を利用して給料を支払うことができます

    未払賃金立替払制度とは、企業が倒産したことにより賃金が支払われないまま退職した労働者に対して未払賃金の一部を国から立て替え払いしてもらえる制度のことです。

    全国の労働基準監督署および労働者健康安全機構で実施されており、倒産によって退職を余儀なくされた従業員のセーフティネットとして活用されています。

    未払賃金立替払制度を利用するには、会社と従業員の双方がいくつかの条件をクリアする必要があります。

    会社側の条件
  • 事業活動を1年以上おこなっていたこと
  • 倒産したこと(破産など法律上の倒産あるいは事実上の倒産)
  • 従業員側の条件
  • 会社が倒産する6ヶ月前から2年以内に退職している
  • 未払金の総額が定期賃金と退職手当を合わせて2万円を超えている
  • 未払金の総額について破産管財人もしくは労働基準監督署長の証明を受けている
  • 参照元: 「未払賃金立替払制度の概要と実績」厚生労働省

    上記のすべての条件を満たしている会社と従業員が、未払賃金立替払制度の対象です。

    この制度によって立て替えてもらえる金額は未払い賃金の8割までとなっており、退職時の年齢に応じて88〜296万円の間で以下のように上限が設けられています。

    未払賃金立替払制度の限度額

    退職時の年齢 限度額
    30歳未満 88万円
    30歳以上45歳未満 176万円
    45歳以上 296万円

    未払賃金立替払制度を利用した企業は、労働者健康福祉機構に対して賃金を返済する義務があります

    未払賃金立替払制度の対象外である残りの2割の未払い賃金に関しても、従業員に対して支払わなければなりませんので注意が必要です。

    これだけは避けたい!給料が払えない場合の間違った行動3つ

    どうしても給料が払えなくなった場合に、間違った行動をとるとトラブルに繋がってしまいます。

    経営者が給料が払えない場合の間違った行動は、以下の3つです。

  • 従業員に遅延の説明をしない
  • 勝手に給料を減額する
  • 闇金から借り入れをする
  • 対応を間違えると処罰が重くなるケースがあるため、注意しなければなりません。

    それぞれの行動について、詳しく解説していきます。

    従業員に遅延の説明をしないのはトラブルの元

    従業員に給料支払いの遅延についての説明をしないと、会社に対してネガティブな感情を持たれやすくなります

    給料が振り込まれないと、生活が立ち行かなくなってしまう恐れがあるからです。

    給料の支払いを遅延することは本来なら法律違反にあたりますので、従業員から同意を得るのは必須になります。

    どうしても支払いが遅れてしまう場合は必ず説明をして、従業員の反発を招かないようにしましょう。

    勝手に給料を減額してはいけない

    給与明細

    経営者であっても、経営不振を理由に給料を勝手に減額することはできません

    給料の減額は、従業員が職場の規律に違反した場合にのみ認められるからです。

    減給の規定については、厚生労働省のホームページで以下のように記載されています。

    減給の定めの制限(労働基準法第91条)
    労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。

    つまり職場の規律を乱した従業員への制裁以外の理由で、減給するのは許されないということです。

    労働基準法第91条の違反として罰則の対象となりますので、どんなに困ったとしても無断で減給するのはやめましょう。

    闇金から借り入れをするのは禁じ手

    どこからも借りられなくなったからといって闇金から借り入れをしてしまうと、取り立てに一生悩まされることになります

    闇金は異常な高金利を設定しているため、すぐに利息が膨れ上がってしまうからです。

    闇金とは?

    10日で10.0%など法外な高金利で貸し付けをおこなう、違法な貸金業者のこと。
    正規の貸金業者である消費者金融とは全くの別物。

    闇金に関わると自力では解決できなくなり、最終的には弁護士の力を借りなければならなくなります。

    同じ貸金業者でも消費者金融なら貸金業法を遵守しているため、利息が膨れ上がることはありません

    緊急で資金を調達しなければならなくなった場合は、闇金ではなく消費者金融を利用しましょう。